慶應義塾大学理工学部電気情報工学科 田邉フォトニック構造研究室
Research
結合共振器によるダークパルス発生シミュレーション
実験結果を忠実に再現できる新たな計算モデルの提案
光を小さな領域に閉じ込めるデバイスである微小光共振器を利用すると,様々な非線形波長変換が起こります.簡単な例を挙げます.ある色(たとえば緑色だとします)のレーザー光を共振器に入れると,出てきた光が青色から赤色まですべて含んだ虹色の光という現象が実際に起こりうるのです.このような現象や出てくる光のことを私たちは光カーコムとよんで研究を行っています.(実際に光カーコムとよぶことのできるものには様々な条件があるのですがここでは割愛します).さて,光カーコム自体はとても面白い現象なのですが,その発生のためには非常に多くの条件が必要とされています.特に重要なのが屈折率に関する条件です.この屈折率に関する条件が整わないと光カーコムの発生は不可能とされています.
本研究では通常光カーコムの発生が難しいとされている条件下における光カーコムの新たな数値シミュレーションモデルの提案を行いました.単一の共振器では発生できないが,結合共振器(2つの共振器を組み合わせたモデル)を利用することで光カーコムが発生可能であるという先行研究に基づいて,その実験結果をより忠実に再現するモデルを確立したことが特徴です.また,このモデルを利用することで従来の計算手法では確認できなかった新たな現象を発見することができたことで,さらなる研究の進展が期待されています.
図1:結合共振器を利用したダークパルス生成の概略図
図2:ダークパルス生成のシミュレーション結果